スケートボードを始めようと思った際、最初に突き当たる壁が「どのデッキ(板)を選べばいいのか」という問題です。僕は元プロスノーボーダーとして活動し、現在は愛媛県新居浜市の黒島海浜公園などでスケートボードを楽しんでいます。雪の上からコンクリートへとフィールドは変わりましたが、道具を選ぶ際のロジックは共通しています。
この記事では、初心者が最短ルートで自分に合ったデッキを選ぶための基準を、論理的に解説します。
1. スケートボードのスタイルと遊び方を整理する
デッキを選ぶ前に、まずはスケートボードでどのような遊びができるのかを把握しましょう。自分の興味がどこにあるかを知ることで、選ぶべき道具の方向性が見えてきます。
フラット・カーブ・バンク
スケートパークにある主要なセクション(構造物)を利用するスタイルです。
- フラット: 平地で板を弾いてジャンプしたり、板を回転させたりする、すべての基礎となる動きです。
- カーブ: ボックス(箱)や縁石の縁に、板や金具(トラック)を当てて滑らせるスタイルです。
- バンク: 斜面を駆け上がってターンしたり、飛び出したりする立体的な動きです。
これらは、多くのスケーターがまず練習し始める、最も一般的な遊び方と言えます。
ボウル・ランプ
- ボウル: コンクリート製のすり鉢状の施設です。
- ランプ: U字型や半円筒状のセクションです。 振り子のように往復しながら加速し、ターンやカービングを繰り返します。僕は現在、ボウルでのカービングをメインに滑っています。
フリースタイル
場所を問わず、平地のみを使用して板を立てたり、ダンスのようなステップを踏んだりするスタイルです。自分と板の対話だけで完結する、独自の魅力があります。
滑る場所については、スケートパークを利用する人もいれば、それ以外の場所で楽しむ人もいます。自分がどのような環境で滑りたいかに合わせて選択してください。
2. デッキサイズの論理:初心者の基準は「8.0インチ」
デッキ選びで最も重要なスペックは、デッキの横幅、つまり「サイズ」です。これはインチ単位で表記され、滑りの安定感と操作性のすべてを決定します。
初心者の無難なサイズは「8.0インチ」
結論から言えば、初心者が最初に選ぶべき最も無難なサイズは、8.0インチです。
- 操作性の高さ: 板の幅が標準的であるため、重量が軽く、足の力で板をコントロールしやすいのが特徴です。
- トリックの練習しやすさ: 板を回転させるトリック(フリップなど)を練習する際、板が軽いことは大きなアドバンテージになります。
- 入手しやすさ: 世界的な標準サイズであるため、種類が豊富で好みのデザインを見つけやすいのも利点です。
「8.25インチ」という選択肢
標準より約6mmほど幅が広いのが8.25インチです。
- 安定感の向上: 足裏の接地面積が増えるため、ライディング中の安定感が格段に上がります。
- 着地の安心感: ジャンプした後の着地時、足場が広いためミスを許容してくれる範囲が広がります。
ちなみに僕は現在、8.25インチを使用しています。理由は、ボウルでのハイスピードなカービングを楽しむ際、足元の安定感が不可欠だからです。
▼僕が今使っているデッキはこちら
しかし、初心者のうちはこの「0.25インチ」の差による操作感の違いを判別するのは困難です。まずは最もバランスの取れた8.0インチから入り、そこを基準にして、将来的に「もっと安定感が欲しい」と感じればサイズを上げ、「もっと軽く動かしたい」と感じればサイズを下げる、という判断をするのが最も論理的な上達への近道です。
▼8.0インチのおすすめはこちら
▼8.25インチのおすすめはこちら
3. 「グラフィック」選びはモチベーションを維持する戦略
サイズを8.0インチ(あるいは安定志向の8.25インチ)に絞った後、次に決めるべきは「グラフィック(デザイン)」です。これは単なる好みの問題ではなく、継続するための合理的な判断基準です。
デッキには他にも「キック(反りの強さ)」や「コンケーブ(湾曲の深さ)」といった細かいスペックがありますが、初心者が最初からこれらを気にする必要はありません。プロスケーターであっても好みが分かれる部分であり、最初から「正解」を導き出すのは不可能です。
それよりも、自分が「かっこいい」「これを使いたい」と思えるデザインを選ぶ方が、以下の理由から重要です。
- 練習頻度の向上: 気に入ったギアを持っていると、使いたいという欲求が湧き、自然と練習回数が増えます。
- 心理的な継続性: 練習で転倒して痛い思いをしても、お気に入りの板が相棒であれば、もう一度トライする意欲が維持しやすくなります。
「中身のスペック」で迷って時間を浪費するよりも、直感的に気に入ったデザインを選んで早く滑り始める。これが初心者が取るべき最も効率的な戦略です。
4. デッキに付く傷は「成長の記録」
新品のデッキを購入すると、傷つけるのがもったいないと感じるかもしれません。しかし、スケートボードにおいて、デッキの傷はネガティブなものではありません。
板の裏側が削れたり、テール(端)がボロボロになったりするのは、あなたが正しく練習し、板を弾いている証拠です。
- 傷の意味: デッキに刻まれる傷は、あなたがそのセクションに挑戦した記録です。
- 買い替えのサイン: 板が削れて弾きが悪くなったり、ヒビが入ったりした時が、あなたのスキルが次のステップへ進んだタイミングです。
傷が付くことを恐れず、むしろ板を使い切るつもりで練習することが、上達への唯一の道です。
5. ロジカルなデッキ選択のまとめ
これまでの内容をまとめます。初心者がデッキ選びで迷った時は、この手順に従ってください。
- サイズを「8.0インチ」にする
- 最も標準的で、あらゆるスタイルに対応できる無難なサイズです。
- 安定感を最優先したい場合のみ、8.25インチを検討してください。
- 直感でグラフィックを選ぶ
- そのサイズの中で、自分が「かっこいい」と感じるブランドや絵柄を1枚選んでください。デザインはモチベーションの源です。
- 専門用語は一旦忘れる
- キックやコンケーブといった細かい違いは、2枚目以降のデッキを買う際の楽しみにとっておいてください。
まずは論理的に「失敗しないサイズ」を選び、あとは自分の感性で選んだ相棒と共に滑り出す。これだけで十分です。
次回は、デッキに取り付ける金具「トラック」の選び方について解説します。デッキの幅とトラックの幅には密接な関係があります。まずは自分に合ったデッキを1枚手に取ってみてください。



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