スケートボードを手に入れて、一番最初に練習すること。それは「プッシュ」です。
地面を蹴って進む。文字にすればたったそれだけのことですが、実はプッシュこそがスケボーで最も奥が深く、そして「スタイル」が出る最強のトリックだと僕は思っています。
僕は元々プロスノーボーダーとして活動していましたが、22歳の時にスケボーに出会い、その魅力にどっぷりハマってしまいました。 スノーボードを極めた僕から見ても、スケボーのプッシュは驚くほど合理的で、かつ習得しがいのある動作です。
今回は、初心者の方が「ただの移動」ではなく「カッコいいライディング」としてのプッシュを身につけるためのコツを、僕の経験を交えて詳しく解説します。
プッシュの基本:まずは「止まった状態」で足の位置を確認しよう
いきなり地面を蹴り出す前に、まずは板の上での正しい立ち位置を確認しましょう。ここがズレていると、どれだけ力一杯蹴っても安定しません。
前足のポジションは「ビスの上」
まず、前足をデッキ(板)の真ん中より少し前、前側のネジ(ビス)が隠れるくらいの場所に置きます。 この時、足の向きは進行方向に対してまっすぐ縦に置くのがポイントです。
後ろ足は進行方向に向けて地面へ
反対側の足(後ろ足)は、進行方向を向くようにして地面に置きます。
安定の秘訣は「前足の膝」
この姿勢をとった時、前足は板の上で少し高い位置にありますよね。そのため、前足の膝を軽く曲げた状態をキープしてください。 膝が突っ張っていると、不意に板が動いた時に対応できず転倒の原因になります。
ステップアップ:プッシュから「乗り込み」までのスムーズな流れ
地面を蹴る感覚がわかってきたら、次は両足を板に乗せる「乗り込み」の動作を練習しましょう。
- 静止状態で練習する:まずは進まなくていいので、地面にある後ろ足を、前足の少し後ろにそっと乗せてみてください。 この時、後ろ足は進行方向に対して横向きに置きます。
- 前足を回転させる:後ろ足を乗せたら、進行方向を向いていた前足を、後ろ足と同じように横向きに回転させます。
- ポジションを整える:最後に、後ろ足をテール(板の後ろの反り返っている部分)まで下げます。
これで、滑走時の基本姿勢(スタンス)の完成です。降りる時はこの逆の手順を踏みます。前足を縦に戻してから、後ろ足を地面に下ろしましょう。 最初は止まった状態で、この「足の入れ替え」を何度も繰り返して体に覚えさせてください。
元プロが教える「安定感」を爆上げする3つのコツ
プッシュがなんとなく形になってきたら、次の3つのポイントを意識してみてください。一気に「経験者っぽい」動きに変わります。
1. 手を広げてバランスをとる
最初は恥ずかしがらずに、両手を軽く広げてバランスをとるようにしてください。 体がフラつかなくなれば、自然と足元に集中できるようになります。
2. 両膝をしっかり曲げる
これはスノーボードでも共通することですが、膝は天然のサスペンションです。 両膝をしっかり曲げて重心を下げることで、路面の凸凹やバランスの乱れに即座に対応できるようになります。
3. 「1回蹴ってどこまで進めるか」を意識する
初心者に多いのが、焦ってバタバタと何度も地面を蹴ってしまうパターンです。そうではなく、「一蹴りでどれだけ長く板に乗っていられるか」を試してみてください。 プッシュの本質は、板の上での「片足立ち」です。 片足で安定して乗れるようになれば、蹴る力も自然と効率的に板に伝わるようになります。
要注意!初心者が陥りがちな「ケンケン・プッシュ」の正体
練習中によく見かけるのが、地面を蹴った後にすぐ足を地面についてしまう、いわゆる「ケンケン」のようなプッシュです。
これは、体重が板(前足)に乗っておらず、地面についている後ろ足に残ってしまっている証拠です。これだと「板に乗って進んでいる」のではなく、「地面を走る補助として板がある」状態になってしまいます。
勇気を持って、体重のほとんどを前足に乗せるイメージで蹴り出してみてください。最初は不格好でも大丈夫です。しっかり板に乗る感覚を掴むことが、上達への一番の近道です。
スノーボードとスケートボード、プッシュにおける決定的な違い
元プロスノーボーダーとして、この違いはぜひ伝えたいポイントです。
スノーボードにも「スケーティング」という似た動作がありますが、あちらは両足が固定されている(あるいは片足がバインディングに入っている)ため、足の向きを変えることができません。
対してスケボーは、足が自由です。プッシュの時に前足を進行方向へまっすぐ向けられるというのは、人間工学的に見ても非常に理にかなっていて、スムーズに力を伝えることができます。
「足が離れているからこそ、スタンスを自由に変えられる」。このスケボーならではの自由度を存分に活かしましょう。
まとめ:プッシュはすべての技の基礎であり、究極のスタイル
プッシュは、スケボーにおける「歩く」動作そのものです。 これをマスターすることで、パーク内を自由に動き回れるようになり、さらにチックタックと組み合わせれば進行方向も自由自在に変えられるようになります。
ここをしっかり固めた上で、オーリー(ジャンプ)やショービットといった次のステップに進んでいきましょう。
最初は「たかがプッシュ」と思うかもしれません。でも、慣れてきたらぜひプロスケーターの動画を見てみてください。速くて、力強くて、それでいてリラックスしたプッシュは、それだけで一つの作品のようにカッコいいものです。
怪我には十分気をつけて(特に小石には注意してくださいね!)、自分だけのスタイルを追求していきましょう!



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